高齢者雇用確保に向けての仕組み作り-4-
60歳以降の賃金減額と法的リスク
60歳以降の賃金移行範囲は、①60歳までの賃金×100%、②×70%以上、③×60%以上、④新人レベル以上の4つ範囲があります。それぞれの法的リスクはグラフの通りです。(原資はシミュレーションを行います。)
また、賃金を減額するにあたっては、①60歳~下げる、②65歳~下げる、の選択肢があります。
ただし、法的リスクについては、数少ない判例の中で推察しているものです。あくまで個別の事案ごとに判断されるものであり、これまでの最高裁裁判も各論部分については事例判断です。例えば、長澤運輸事件では賃金総額で平均21%の減額が許容されましたが、老齢厚生年金の不支給期間については調整金の支給、組合との協議等対応すべきことはなされていたことも考慮された上での判決です。
賃金設計ポイント
【賃金設計ポイント】
① 賃金(年収)の水準を検討する
② 賃金項目を、「本給」、「諸手当」、「賞与・退職金」に区分して検討する
③ 老齢厚生年金との接続を考慮する
④ 労働組合との協議を実施する
賃金項目ごとに、定年前と定年後相違があれば、その理由を明確に説明できる必要があります。またその理由については、労働契約法20条が掲げる考慮要素(①職務の内容、②人材活用の仕組み、③その他の事情)との関係を意識して説明するのがベターです。このように働き方改革関連法の内容にも照らし合わせて検討する必要があるため、賃金制度全体の見直しが求められます。