
教育研修の実態 -⑥-
今後求められるスキル領域と相対的に需要が下がるスキル領域
LINEヤフー(株)は、全従業員約11,000人を対象に業務における「生成AI活用の義務化」を前提とした新しい働き方を開始、というプレスリリースを7月14日に発表。(https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/018121/)
全従業員にリスク管理やプロンプト技術に関する必須のeラーニング研修を行い、試験合格が生成AIの利用条件としています。生成AIをはじめとする新しい技術を、日々の業務に組み込む時代にシフトチェンジすることは喫緊の課題でもあり、日本でもいよいよ本格稼働する段階に入ってきました。
定型的な事務作業やルーチンワークを担うような定型業務が自動化によって急速に縮小していく構造変化は避けられません。また、マネジメントにおいても、以前のように、「上司=万能」だった時代はもはや過ぎ去り、過去の経験や知識だけでは対応が難しい局面も増えています。
技術革新が進む時代において、会社員に求められるスキルと相対的に需要が下がるスキルを見極めることは、個人のキャリアだけでなく企業の人材戦略にも直結します。

スキル群別にみた生成AIによる代替の現在の可能性
今後求められるスキル領域が理解できたところで、前回から引き続き「世界経済フォーラム2025」のデータに基づき、今度どのようなスキルに投資をしていけばよいのかを検討します。「世界経済フォーラム2025」の「スキル群別に見た生成AIによる代替の今後の可能性(FIGUREB3.1)」を見ても、リーダーシップ、創造的思考、分析的思考などのヒューマンスキルは代替可能性が低いと出ています。もはや、AIやビッグデータなどデジタルスキルは避けては通れない事業環境化にある中で、AI時代であるからこそ、デジタルスキルと同時にヒューマンスキルの重要性も増すという点がポイントです。

今後のスキル投資の優先順位表
赤い枠の中は、「人間力」が必要なスキル領域です。今後、より重要度を増して上司や従業員に求められるものは、AIにはできない意思決定や、人間関係作り、組織作りをしっかり行うことです。AIに仕事を奪われるという意識ではなく、AIに任せる仕事と人間しかできない仕事、これらが明確になってくるということを前提に、企業は今後の人事戦略として、どのような人材が必要でどう育成するのか、早急に検討すべき段階にきています。生成AIは日々飛躍的な進化を遂げていますが、人間力形成は一朝一夕にはできません。計画的に運用していくべきです。同時に、従業員自体の意識改革が必要です。大きな変革の渦中にいることを従業員一人ひとりが理解し、新しいことに取り組む意識が重要になってきます。
デジタルテクノロジーは、もはや必須であるという位置づけで研修に組み込む内容と言えます。例えば、生成AIを業務に取り組むのであれば、プロンプトの質は重要となってきます。プロンプトとは、生成AIに対してどのような情報を提供してほしいかを指示するものであり、その質や構成によって出力結果が大きく左右されます。つまり、プロンプトの質を高めれば、単にAIの性能を引き出すだけでなく、業務全体の効率やスピード、生成される内容の質も向上します。
ただ「AIを使いましょう!」という号令だけでは浸透しません。LINEヤフー(株)社では、どの業務にどのように生成AIを活用するのか、具体的なルール策定しています。時間がかかるかも知れませんが、現状の今ある一つひとつの業務を細分化・分析して、どこにAIを活用するのか、見定め、その上で人材戦略・人材育成を策定することが肝要です。
