
教育研修の実態 -①-
日本のリスキリングは進んでいるのか?
日本では、2020年頃から「リスキリング」という言葉が注目され始めました。企業が意図的に主体となって実施するのがリスキリング。一方、個人の興味・関心がきっかけのリカレント(学習)や自己啓発があります。
ではなぜ、企業はリスキリングに取り組むのでしょうか。リスキリングの本来の目的は、個々に関心のある分野のスキルを高めるのではなく、企業が生き残っていくために事業戦略として成長産業のスキルを身につけることです。さらには、リスキリングとは、スピードアップする社会情勢や産業構造の変化、テクノロジーの発展など高度化する社会変化に適応できるようにスキルを獲得し続ける、連続的な取り組みであるとも言えます。
では、実態はどうでしょうか。日本の教育研修に関わる調査結果やデータを元に検証してみたいと思います。
●従業員1人あたりの教育研修費用の推移(実績額)(単位:円/従業員一人あたり)

●従業員1人あたりの教育研修費用(企業規模別)

●GDP(国内総生産)に占める企業の能力開発費の割合の国際比較について (単位:%)

国際比較と日本の教育研修費推移から考える
少し古いデータですが、厚生労働省の「GDPに占める企業の能力開発費用の割合」では、諸外国と比較をすると日本のみ著しく低水準です。各国、企業の競争力を高めるためにスキル開発が重要視されていることの現れであり、GDPの1%以上を能力開発費として投資しています。また、日本における従業員一人当たりの教育研修費のグラフからは、2013年からほぼ横ばい傾向であり、単純には言えませんが、日本の年次GDP実額では、2013年528兆円、2023年は557兆円であることから、今の時点でも日本が他国並みに1%を超えているとは推察しがたいと思われます。企業別にみると、2023年の大企業と中小企業の平均金額差が1万円弱あり、企業間の格差も垣間見えます。次回は、教育研修の具体的な内容についてみていきたいと思います。