アンコンシャス・バイアスを理解する (1)
アンコンシャス・バイアスとは何か?
「アンコンシャス・バイアス」とは、心理学的には「無意識に生じる認識や偏り」と定義されます。つまり、無意識の根拠のない思いこみや偏見のことを指しており、自分自身は気づいていない「ものの見方やとらえ方の歪みや偏り」とも言えます。
アンコンシャス・バイアスとは、人間の脳にとっては省エネで動かす「高速判断」「知的連想」の機能です。というのも、何もしていない間でも脳が大量のカロリーを消費していると言われています。そのような中、脳は効率的に情報を処理するために常にパターンやルールを作り出そうとします。その過程で自分自身の過去の経験や知識、価値観、信念をベースに認知や判断を自動的に行うことによって、大量の情報を処理し、すばやく行動することが可能となります。副次的には、無意識のうちに些細な言動や何気ない発言を引き起こす要因の一つともなっています。
また、このバイアスは、個人的なバイアスだけでなく、社会や文化の中で形成される集団的なバイアスもあります。例えば、特定の人種や性別に対して、社会的なステレオタイプが存在し、そのステレオタイプが人々の判断や行動に影響を与えることがあります。
アンコンシャス・バイアスの具体例
バイアスにもいくつか種類がありますが、具体的な発言を挙げました。どれも日常会話でよく耳にするようなフレーズですが、はっとした方もいらっしゃるのではないでしょうか。これが「アンコンシャス=無意識の」と言われる所以です。
日常の些細な言動や何気ない行為に含まれているので、もし管理職層が「男が育休?」というような、無意識の偏見や思い込みを自分が持っていることに気づかないまま日々の言動や意思決定をしていると、部下のやる気を減退させたり、採用・配属・育成・評価などの各局面でも公正な判断ができないということが起こり、多様な人材が活躍できない原因の一つとなる可能性もあります。
また、アンコンシャス・バイアスは自分自身に対しても起きうるものです。具体例の「私にはリーダーが務まるはずがない、無理だ」と、女性が自分自身にバイアスをかけてしまい、資質・能力は十分満たしているにも関わらず、自分自身で活躍の機会を失しているケースが発生していることも考えられます。
アンコンシャス・バイアス自体を完全に取り除くことは難しいものです。一番重要なことは、まずは自分自身が持つバイアスに気づくことが重要です。その上で、多様性を受け入れることや、客観的な情報をもとに判断することなど、意識的な取り組みが必要です。また組織レベルでは、多様性を推進する取り組みや採用や評価のプロセスにおいてバイアスを排除するような取り組みが必要となります。次号では、組織の中でのアンコンシャス・バイアスについて理解を深めていきたいと思います。