
教育研修の実態 -③-
日本企業での社員教育の実態
令和5年度「能力開発基本調査」結果によると、従業員の社員教育で「OJT重視する」と回答したのは約8割と、いまだに新卒一括採用が浸透している日本においては、集合研修スタイル等で新人を効率的に育成するOJTが主流と言えます。一方、異なるデータからは、意外なことに日本のOJTの実施率が国際的に見て低い水準にあることが分かります。厚生労働省のデータによれば、日本の男性のOJT実施率は50.7%、女性は45.5%であり、いずれもOECD平均を下回っています。


実務を通じて学ぶOJTでは、早期即戦力化、企業文化や価値観を効率的な浸透、理解促進などのメリットもたくさんあります。しかしながら、あまりに効率重視、画一的になりすぎると新人の没個性化、主体性のはく奪を招きかねません。他方では、教える側(企業)が感じているOJTの課題もあり、「人によって指示や教える内容が異なっている」という課題感が最も高いことが分かります。また、中途入社では特に「マニュアルや書類・業務ツールがそろっていない」、「古い教え方のままになっている」という課題感もやや高いのが特徴です。昨今、企業は採用競争の激化、人手不足、スキルのミスマッチと様々な課題を抱えていますが、人材育成や能力開発と離職率の関係等という視点で考えていきたいと思います。