早期・希望退職制度導入までの流れ
増加する早期・希望退職者募集
先行きが見えない新型コロナの感染拡大は、経済にも大きな影響を及ぼしています。今年に入り急増している早期・希望退職者の募集。その傾向として、外出自粛が直接的に影響した外食産業・アパレル業や、インバウンド需要の消滅による宿泊・旅行業・小売業などの直接的に影響がある業界が多く見られます。また、新型コロナ拡大による景気減退、米中貿易摩擦、日韓関係悪化等、重なるネガティブ要因により輸送用機器、電子機器、印刷業なども苦戦が伺えます。
以前は制度の対象を正社員に限る企業が多かったのが、無期契約社員や定年再雇用者など、正社員以外も対象に広げているのが特徴的だとも言えます。
早期・希望退職制度は、経営の立て直し策として緊急手段のように使われますが、場当たり的な施策として扱うことでは企業存続まで危ぶまれかねません。デメリットを可能な限り排除し、いかに目標人数に着地させるかが重要です。団体交渉など経て、時間をかけて制度を作り込むことが必要となります。今年は3月末退職に合わせ、11月12月の発表企業が多く見られました。逆算すれば、恐らく4月には検討に入り、夏頃には方針決定が為され、制度設計に着手したものと想像できます。今回は早期希望退職がどのようなものが、概略をお伝えします。
1.希望退職制度とは
募集期限と退職数の目標を設定し、一定期間内に一定人員の退職を募る制度で、個別に応募を働きかけることもあります。希望退職募集は、企業側の人件費削減の必要性から、緊急避難策的に実施する傾向が強いようですが、長期的な人材構造の是正の視点から実施する場合もあります。人員削減目標の早期達成を図る為、比較的転職しやすい若年・中堅層も対象とするケースも少なくありません。
2.優遇措置とは
①割増退職金:通常の退職金に加えて、一定額の「割増退職金」を支給する
②特別休暇制度:就職活動のために特別休暇を付与する制度
③再就職支援:再就職支援会社等と法人契約をし、従業員の退職後をサポート
3.デメリットとは
①目標人数と希望人数にギャップが生じる恐れがある
②優秀な人材が流出する恐れがある
③割増退職金の一時的負担増
④残った従業員のモチベーションの低下が起こる恐れがある