共働き世帯「年収の壁」についての考察
共働き世代が増えても世帯収入が増えない実態
厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、2018年の1世帯当たりの平均所得額は全世帯で552.3万円であり、1994年の664.2万円をピークに緩やかな減少傾向にあります。1994年と言えば、ちょうど専業主婦世帯(930万世帯)と共働き世帯(943万世帯)は拮抗し、その後は共働き世帯が増加傾向となります。共働きでありながら世帯収入が下がるという昨今の現象には、扶養控除枠や雇用形態が要因の一つとして挙げられます。今回はいまだ立ちはだかる、所謂「年収の壁」について考察します。
1.扶養控除=「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」
2020年分から年末調整の内容が大幅に変更。給与所得控除の引き下げ、基礎控除の引き上げなどに伴い、配偶者控除、扶養控除などの合計所得金額要件の見直しが行われました。ただし、給与収入の要件が変わるのではありませんので、年収額は「103万円以下」のまま変更ありません。「扶養の範囲内で働きたい」というのは、実は「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」から成り立っており、整理が必要です。
2.雇用環境が厳しい今こそ、将来を見据えたキャリアビジョンが必要
一般的に年収150万円で社会保険料等は21万円程度になるとされ、足元の負担増は否めません。しかしながら長期的には、年金はもちろん、雇用・健康保険などを受け取れるメリットはかなり大きいと言えます。また非正規社員では比較的簡易な業務に就くことが多く、長く勤めても経験やスキル向上が望みにくく、収入も上がらないという負のスパイラルにあります。
コロナ禍での雇用環境において厳しい現実が突き付けられた今、将来を見据えてキャリアを含めた生涯プランを検討する時期にきているのではないでしょうか。
▼雇用形態、性、年齢階級別賃金(令和元年女性)